ケムリ研究室『ベイジルタウンの女神』

ベイジルタウンの女神

コロナの影響でずっと観劇できない状態が続いていて、その魅力は頭ではなんとなくわかるものの、具体的な感覚としては忘れかけていた。そのリハビリを兼ねて6ヶ月ぶりの観劇。

このチケットをとるまでも紆余曲折があった。座席数が半分以下になっているためもあって発売日には瞬殺という状態でとれなかった。それが昨今の緩和の情勢で座席数を拡大して発売するという情報があり、試しに発売サイトにアクセスしてみたら、まだ拡大前なのに翌日に残席がひとつだけあったのだ。もともとの価格の高さに加えての手数料の高さと、休みの日なのに早起きしなければならないことに躊躇したが、これも縁だ。結局購入した。いつも思うけど、チケットの入手も実は観劇という体験の一部で、そこから物語ははじまっているのだ。

ケムリ研究室というのはケラリーノ・サンドロヴィッチと緒川たまきによる夫婦ユニット。今回が第一作だ。ベイジルタウンというスラム地域の大規模開発をもくろむマーガレットは用地の取得をかけて賭をもちかけられる。着の身着のままで単身ベイジルタウンに赴いてちょうど1ヶ月間一歩も外に出ずに過ごすことができたら、用地をただで入手できるが、途中であきらめたら逆に今所持している土地を失うというものだ。恐れを知らぬお嬢さん育ちのマーガレットは躊躇なくその賭にのる・・・・・・。

全編笑いどころ満載で、全盛期のハリウッド映画のような多幸感あふれる作品だった。リハビリとしてはぴったりで、演劇をみるという体験がどういうものかふたたび感得できた気がする。ただひとつ欠けていたのは深みのようなものだけど。それはこの作品に求めるべきものじゃない。ただ、今観劇という体験の中で一番ぼくが求めているのは、その深みなんだということがよくわかった。次は、その深みのなかにずっぽりと浸ってみたい。

作・出演:ケラリーノ・サンドロヴィッチ/世田谷パブリックシアター/S席12000円/2020-09-20 12:00/★★★ 出演:緒川たまき、山内圭哉、菅原永二、尾方宜久、高田聖子、植本純米、仲村トオル、水野美紀、温水洋一、犬山イヌコ、吉岡里帆、松下洸平、望月綾乃、大場みなみ、斉藤悠、渡邉絵理、荒悠平、高橋美帆