『8月の家族たち August: Osage Country』

8月の家族たち

アメリカで2007年に初演され高い評価を勝ち得た戯曲。メリル・ストリープとジュリー・ロバーツ主演で映画化もされている。

オクラホマ州オーセージ郡、大草原の片隅で二人だけで暮らす夫婦。夫ベヴァリーは元詩人で現アル中。妻ヴァイオレットはガンの闘病中で薬物の過剰摂取。うだるような8月、住み込みで家事を見てもらうネイティヴ・アメリカンの娘ジョナを雇い入れた数日後にベヴァリーは失踪する。そして……。久しぶりに集まった三人の40代の娘バーバラ、アイヴィ、カレンとヴァイオレットの妹マティ・フェイ家族。ヴァイオレットは、薬の作用もあり、彼らの心の傷を毒舌で激しく攻撃する……。

俳優陣もいいし、見所が多い巧みに構成された戯曲で、存分に楽しんだのは間違いないんだけど、琴線をスレスレのところでそれて、もっとずっと感動してもいいはずなのにこれだけかという置いてきぼりを食ったような気持ちになってしまった。直後に映画を見て同じ感覚だったので演出や俳優のせいではない。戯曲に対する消化不良だ。一瞬でもいいのでこの家族を俯瞰する視線が欲しかった。具体的にはジョナだ。この土地の歴史や彼女が読んでいるエリオットの本を絡めた方がよかった気がする。

前から3列目の良席だったので、俳優たちを間近で見られた。常盤貴子は目をみはるほど美しい。

作:トレイシー・レッツ(翻訳:目黒条)、上演台本・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ/シアターコクーン/S席10000円/2016-05-07 18:30/★★

出演:麻実れい、秋山菜津子、常盤貴子、音月桂、橋本さとし、犬山イヌコ、羽鳥名美子、中村靖日、藤田秀世、小野花梨、村井國夫、木場勝己、生瀬勝久