ハイバイ『夫婦』

夫婦

岩井秀人の自分史演劇化シリーズの最新作。今回は、理不尽な暴力で子供たちを押さえつけてきた父親の死が描かれる。電話で母から呼び出されて病院にいってみると父親は見る影なくやつれて死に瀕していた。彼は家族全員が揃ったその日のうちに亡くなる。その死の裏には医療ミスがあったんじゃないかと原因を追及する中で自身が有能な医師だった父親の職業意識に触れ、遅ればせながら心の中で微かな和解を果たすというストーリー。いや和解というより理解というべきか。もちろん、それで過去の暴力を赦すわけではまったくないのだが。それにしても、こういう崩壊した家族の物語は特別な感情なしに見られない。

一応父と母の関係は描かれるものの『夫婦』というタイトルは若干ミスリーディングかもしれない。今回の主役は「父」だ。これまでの作品(全て見ているわけではないが)で暴力的な父親だったというのは描かれていたが、高名な医師だったというのは初めて知った。てっきり社会的にも破綻している人なのかと思い込んでいた。社会的には成功して外面はいいが、家庭内でDVを行う暴君というのはそれはそれでつらい。

菅原永二が岩井秀人の役を演じて岩井自身は葬儀屋や医師など端役としてところどころに登場するという演出にニヤリ。

作・演出:岩井秀人/東京芸術劇場シアターイースト/指定席3500円/2016-01-30 18:00/★★★

出演:山内圭哉、岩井秀人、平原テツ、川面千晶、鄭亜美、田村健太郎、高橋周平、猪股俊明、菅原永二