『どん底』
原作:マクシム・ゴーリキー、脚色・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ/シアターコクーン/S席9000円/2008-04-12 19:00/★★★
出演:段田安則、江口洋介、荻野目慶子、緒川たまき、大森博史、大鷹明良、マギー、皆川猿時、三上市朗、松永玲子、池谷のぶえ、黒田大輔、富川一人、あさひ7オユキ、大河内浩、犬山イヌコ、若松武史、山崎一
社会の最底辺の人々が暮らす下宿宿。その日暮らしの職人たち、アルコール依存症の元俳優、いかさま博打打ち、恋愛小説の中に逃避している娼婦、元男爵を自称するヒモ、泥棒。因業な大家と妻、そして虐待される妹。ある日客としてやってきた不思議な老人。日ごとくりかえされる喜劇とときおり波のように押し寄せる悲劇。
「どん底」とはいうけどみんな酒を飲んだり軽口を言い合ったりしてそれなりに楽しそうで、むしろほんとうの「底」つまり死の手前の最後のセーフティーネット的な場所だ。とはいうものの、そこから這い上がることはとても難しくて、出て行く道は実質上死ぬか警察につかまるかくらいしかない。だからこそ笑うしかないんだろう。笑いの部分はたぶんケラリーノ・サンドロヴィッチによる完全なオリジナルで、いいテンポ感をだしていた。
満ちあふれる笑いとうらはらに、舞台の上にはまったく救いは用意されていないのだけど、でも救いなんてなくても人生は続く。そういうものだ。