オリガト・プラスティコ『漂う電球』
作:ウディ・アレン(訳:鈴木小百合)、演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ/本多劇場/指5500円/2006-09-30 19:00/★★★
出演:岡田義徳、高橋一生、広岡由里子、伊藤正之、町田マリー、渡辺いっけい
ニューヨーク、ブルックリンの貧しい家庭が舞台。若い女にいれあげ一攫千金を夢見ながら借金取りから逃げ回る父親マックス。学校をやめて部屋にひきこもり手品の練習ばかりしている長男ポール、悪い仲間とつるんで遊ぶスティーブ、そしてそんな一家をただひとり守ろうとする母親イーニッド。ウディ・アレンの映画作品も決して派手ではないが、舞台がアパートの一室に限定されることもあり、前半はかなり地味に進行する。
休憩をはさんで、渡辺いっけい演ずるジェリー・ウェクセラーの登場とともにそれが一変する。とにかく渡辺いっけいの演技がすばらしかった。人間的な魅力にあふれながら、自分の限界の中で生きざるをえない男の哀しさを全身で演じていた。彼が去った後にはもともと存在していた絶望がさらに色濃く、存在感を増してみえる。
ウディ・アレン独特の乾いたユーモアとほろ苦さをそのまま生かすオーソドックスな演出が成功していたと思う。岡田義徳もよかった。