小泉義之『ドゥルーズの哲学 生命・自然・未来のために』
はるか昔に買って挫折していた本。挫折した理由は、読んでいて知の欺瞞騒動が頭にちらついてしまったからだ。現代の哲学者たちは自然科学の難解なジャーゴンを振り回すけど、その自然科学への理解は誤っていることが多いことが明らかになった事件で、本書にもその手のジャーゴンがちらばっているようにみえた。それで、難解な部分を、ここはがんばって理解すべきなのか、すっとばすべきなのか判断できなくなってしまったのだ。
今回読んでもそのあたりは一緒だ。ただ、最後まで読み通して、ジャーゴンをとりのぞいたドゥルーズの思想そのものはすごそうだという片鱗はかいま見えた。
世界を、作用する力の「差異と反復」の場とみなして、自然や生命というものは、その場を表現する複雑な微分方程式を実地に解いているのだという考えは、スピノザの現代的解釈としてすばらしい。遺伝子操作を肯定して人間を越えるあらたな生命を祝福しようとする姿勢はとてもラジカルだ。そして生きる力をすべての道徳の最上位におくのはとても倫理的だと思う。
ただ、もともとドゥルーズの思想がプロパガンダ的なので、それをそのままプロパガンダ的な文体で解説するのはあまり成功していないと思う。
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