石川文康『カント入門』
哲学系の本を読んでいると、たとえ名前は明に語られなくても常にちらつく人影。それがカントだ。一度ちゃんと読まなくてはと思って、手に取ったのが、カントの著作ではなく、入門書だというのは我ながらかなりへたれだと思う。
でも、本書は一般向けの入門書にしてはかなり難解だ(もう少しパラフレーズしてほしかった)。むしろ、『純粋理性批判』、『実践理性批判』、『判断力批判』の三批判書と晩年の『宗教論』など主要な著作がとりあげられているので、カント思想のある程度網羅的なカタログと考えた方がいいかもしれない。
ぼくが理解した範囲で思い切りおおざっぱに書くと、18世紀後半、神の全能性を理性が一部借り受けて、バブル状態にあったのを、その先にある崩壊の兆しをいち早く見つけて手を打ったのがカントだ。理性(および悟性)の限界をはっきりと線引きした上で、もう一度理性というものの屋台骨を一から築き上げようとしたのだ。だが、それは哲学史的には画期的なことだったけど、そのあと現代まで脈々とわき上がり続けてきた理性に対するカント以上に痛烈な批判によって、屋台骨そのものは今ではかなりぼろぼろになっているのが現状だと思う。
もちろん、カントの思想は現代の文脈でも十分意味をもつものだと思うけど、それを追求してゆくのは本書の範囲ではないようだ。
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