仲正昌樹『「みんな」のバカ! 無責任になる構造』

「みんな」のバカ! 無責任になる構造

タイトルは、実は『「みんな」の壁』にしようとしたのではないかと勘ぐりたくなる。

「赤信号みんなで渡れば怖くない」の「みんな」とは誰のことなのだろう。というところからはじまって、「みんな」がだんだんバカになってゆく大衆社会の構造、「みんなの責任」という名前の無責任の体系ということに話がひろがってゆき、最後は「みんな」という言葉が使われるときはもう「みんな」という存在はどこにもいなくなっているのだということで、終わる。

「みんな」について哲学的につきつめようという本ではなく、森元首相、藤井元道路公団総裁などの時事ネタや、著者自身の赴任先である地方都市金沢におけるカルチャーショック(書き連ねてある悪口が『坊っちゃん』を思わせておかしい)、新興宗教への入信体験などのエピソードが主体のエッセイスタイルの本だ。読みやすいのだが、ちょっと物足りなくもある。

★★