永井均『道徳は復讐である -- ニーチェのルサンチマンの哲学』

道徳は復讐である―ニーチェのルサンチマンの哲学 (河出文庫)

永井均のニーチェに関する本を読むのは『これがニーチェだ』に続いて二冊目、内容的には目新しいところはそれほどなく、パフォーマティブな変奏曲集という感じだ。

何度目の当たりにしても、現在公認されている倫理や道徳というものが、ルサンチマン[現実の行為によって反撃することが不可能なとき、想像上の復讐によって埋め合わせをしようとする者が心に抱き続ける反復感情]による価値の転倒の結果生まれたもので、あたりまえになって目に見えなくなっているというニーチェの洞察はものすごいし、そのニーチェを誤解してかぶれる人やニーチェ自身のルサンチマンを指摘する永井均の洞察はさらにすごい。

ハンガーストライキという闘争の手法がなぜ有効なのか?現実に強者であるにも関わらず、自分を弱者になぞらえて、二重に勝利を味わう人々。考えさせられる。

文庫版のみの付録である、川上未映子との対談がよかった。彼女の作品はほとんどまだ読んでないけど、物事を根源的に考えることのできる希有な人だなと思った。今度、彼女の作品もちゃんと読んでみよう。