永井均『これがニーチェだ』

これがニーチェだ (講談社現代新書)

『ツァラトゥストラかく語りき』を読んだのはもうはるか昔のことだ。哲学書として読もうとしたわけではなく、リヒャルト・シュトラウス作曲の音楽にひかれて手に取ったのだが、年端のいかぬ子供に理解できるわけもなく、難しい漢字と旧仮名遣いを覚えただけだった。それでも何がかっこよくて何がかっこわるいかを教えてもらえたし(復讐心とか同情はかっこわるい。無条件な肯定がかっこいい)、今でもニーチェは好きな哲学者ベスト3に入っている。

さて、本書は単なるニーチェの入門書というより永井均とニーチェとのコラボレーションといったほうがいいかもしれない。荒削りで矛盾を含むニーチェの思想が余分な部分をはぎとられ3つの「空間」の中に整理されている。その中では、ニーチェ自身も批判されており、さらにニーチェの思想を愛している人には復讐意志が隠れているし、ニーチェの基準からすれば「弱者」だとまでいわれている。真の強者は「力の意志」などをもつ必要なく、ただあるがまま強い力をもっているだけなのだ。

それと関連して「誠実」が下品な徳であるというのに妙に納得させられた。

★★★★