永井均『私・今・そして神』
ひとことでいうと、とても「ろましい」本。でもそれほど「しくく」ない。
なぜ私は私で、あなたは私じゃないのか。あなたはあなた?そうかもしれないけど、それは私が私であることとはまったくちがったことなのだ。いま私の前には世界が広がっている。それを目でみて耳できいたりさわってみたりすることができる。でもあなたにはできない。なぜってこの世界は私の世界だから。
でも、その私が私であると認識するためには、この世界が私の世界でなく、客観的な世界であり、私はその中で存在しているたくさんの人間の中のひとりであることを認めなくちゃいけない。私は世界の中にいて世界は私の中にあるのだ。
「今」もまた同じ。なぜ現在は現在で、過去や未来ではないのか……。
哲学はまだはじまっていないのだそうだ。いや五分前に作られた世界の中で突然はじまったのかもしれない。
★★★