難波江和英、内田樹『現代思想のパフォーマンス』

現代思想のパフォーマンス

新書で出てくるような哲学の入門書は表面をなでるだけで、読んでもわかったようなわからいないように微妙な気分にさせてくれるだけだし、かといって専門書は読みすすむことが目的になって、読み終わって得られるのはわけのわからない達成感だけだったりする。本書は新書ではあるが、ソシュール、バルト、フーコー、レヴィ=ストロース、ラカン、サイードという6人の思想家の思想のさわりを【案内編】で、主要な概念を【解説編】で、その思想を使って映画、小説などを読み解くところを【実践編】で、きちんと紙幅をさいて説明している。(ラカンをのぞいては)一応わかったように気分にさせてくれた。

といっても、後書きにあるように哲学というのはわかることが目的ではなく、わからないということに気づいて、もっと理解したいという欲望をかきたてるのが目的で、そういう点からも実践編をありがちな文芸批評でなく、身近な生活、たとえばスーパーでの買い物とかでやったらよかったのにと思わなくもない。

ありそうでなかった本だと思う。ほかの思想家で続編をつくってくれるともっとうれしい。

★★★