『三人姉妹』を追放されしトゥーゼンバフの物語

作・演出:岩松了/新国立劇場小劇場/A席5250円/2002-04-13 19:00?/★★

出演:戸田菜穂、李丹、高橋珠美子、矢代朝子、荻野目慶子、戸田昌宏、有福正志、塩田貞治、朝比奈尚行、岩松了

チェーホフ『三人姉妹』のラスト近くで決闘で死んでしまったはずのトゥーゼンバフ男爵だと名乗る男が1940年代のニューヨークの町に現れる。彼と、三人のイリーナ(三人姉妹の末っ子、男爵の許婚だった。この作品では、女優、娼婦、劇場の下働きの三人のイリーナが登場する)、それに当時売れっ子の劇作家テネシー・ウイリアムズが奇妙に関わりあう奇妙な物語。冒頭シーンは「三人姉妹」を演じる劇中劇のシーン。なんだかこのまま「三人姉妹」を観ていたくなった。かなり難解な作品だが、安部公房の不条理小説を読みなれた目からすると、いくつかのエピソードが理屈を越えた理屈で結びつきあうのは、わからないなりに納得できたりもする。だが、多分最低3回は観ないと、全体を理解することはできないだろう。女優のイリーナを演じた戸田菜穂はテレビでの地味な印象が嘘のような存在感があった。下働きのイリーナの荻野目慶子は怪演という感じ。テネシー・ウイリアムズ役は岩松了本人。いつも自分の作品には何かしら出演する人だが、今回は主要人物の一人。あと、チェプトゥイキン役でコミカルな味を出していた有福正志がよかった。