ハイバイ『月光のつゝしみ』

月光のつゝしみ

2002年に岩松了自身の演出、竹中直人、桃井かおり主演でみたときは軽い芝居だと思っていた。今日観て思ったのは、岩松了の書くセリフの困難さだ。

姉弟の物語。年の離れた若い妻と結婚したばかりの弟の家に、事情があって職を辞した姉が一時的に同居している。それにたまたま遊びに来ている同郷の友人夫婦という人物設定。姉弟がそれぞれの感情を爆発させながら、奇妙な論理と比喩にあふれたセリフをいうんだけどこれが難しい。竹中直人と桃井かおりはとても自然だったので気がつかなかったが、今回難しさを目の当たりにした。それでも松井周さんはよかった。竹中直人になりきってというか彼の演技プランをほぼ完璧にコピーしていたように見えた。姉役の能島瑞穂さんに対する演出はプランが定まってなかったという印象。わけもなく急に切れてしまう困った人のように見えてしまった。

ただ、今回その不自然さの中から、セリフの深さが伝わってきたので、竹中直人、桃井かおりコンビのあまりに破綻のないなめらかさが「正解」というわけでもなく、いろいろやりかたはあるんだと思う。いびつだけど、この戯曲のすばらしさを再発見させてくれる舞台だった。

作:岩松了、演出:岩井秀人/神奈川芸術劇場大スタジオ/指定席3300円/2013-09-21 18:00/★★

出演:松井周、能島瑞穂、上田遥、坂口辰平、永井若葉、平原テツ