オリガト・プラスティコ『龍を撫でた男』
作:福田恒存。演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ/本多劇場/指定席5500円/2012-02-04 19:00/★★★
出演:山崎一、広岡由里子、赤堀雅秋、大鷹明良、緒川たまき、猪股三四郎、佐藤銀平、田原正治
1952年(昭和27年)初演の戯曲。
精神科病院の院長を務める医師家則とその家族。妻和子、その母と弟秀夫。二人の間の子供たちは何年も前の遠足の時に事故で亡くなっている。同行していた和子の母はそれをきっかけに発狂してしまった。和子と秀夫もどこか精神のバランスを欠いていて、いつか自分が発狂することを怖れている。ただひとりまともな家則は、どこまでも穏やかで寛大で、家庭生活の退屈、波乱、苦悩をすべて受け入れているようみえる。だが、ふと客に対してもらした、家庭生活円満の秘訣は家長専制という言葉が示すように、彼のアイデンティティはその保護者的な立場の優越感で保たれていたのだ。しかし、妻の友人の女優蘭子とその兄の劇作家綱夫が、元旦その家を訪れたことからバランスが狂いはじめる。追い詰められる家則。
ラストの狂気の描き方が現代の感覚からするとリアルじゃない気がして、そこだけは惜しいが、人間の心理を深くえぐり出すセリフ回しがすばらしかった。