M&Oplays プロデュース『私を探さないで』

今回もかなり難解な作品だ。岩松了は、年をとってから晦渋なマスターピースを作曲したフォーレみたいだ。そのフォーレの曲が劇中で使われていた。
かつて流刑地だった島とその玄関口の町。東京から久しぶりに返ってきた古賀はかつての恩師で今は作家になっている大城の朗読会に参加しようとする。彼らの心に影を落とすのは、同級生で教え子だった三沢晶のことだ。彼女は、大城が、古賀や彼女をモデルにした小説を発表して話題になった直後謎の失踪をしてしまったのだ。しかし三沢は彼らの前に時折姿をあらわし、会話をかわす。彼らはそれをまったく自然に受け入れている……。
三沢が幻影なのか実体なのかはまったく説明されない。そもそも失踪する以前から、ほんとうに彼女がそこにいたのかよくわからない。島の映画館に彼女がいたのかどうか、いたとしたらどこに消えたのかは宙づりのままだ。こういう謎解きは意味がない。三沢晶のありようをそのまま受け入れるしかない。
ひとつ印象に残ったのが携帯電話の使い方だ。アラームや着信の音で物語が展開したり、逆に言おうとしたことが語られないままになったりするのが強調される。
ずっと岩松了の作品で河合優実さんを見てみたいと思っていたが、その願いがようやく叶った。思った以上によかった。複雑な感情が練り込まれた岩松了のセリフを的確に表現していて、ありえない物語を現実にする説得力があった。
作・演出:岩松了/本多劇場/指定席8500円/2025-11-01 18:00/★★★
出演:勝地涼、河合優実、富山えり子、篠原悠伸、新名基浩、岩松了、小泉今日子、