劇壇ガルバ『砂の国の遠い声』

ジャイアンツ

昨年惜しくも亡くなった宮沢章夫の1994年初演の作品の再演。演出は彼の作品を俳優や制作として近くで見てきた笠木泉さんが担当している。

砂漠監視隊というただ砂漠を監視する組織に派遣された7人の男たち。誰もが、あまりにも手持ち無沙汰で、割り当てられた作業を他人に渡すまいとしている。隊員のひとりが砂漠から声が聞こえると言い出しやがて行方不明になる。彼は一週間後に戻ってきたがいなくなっていた間のことを何も覚えていないという。次に別のメンバーも声が聞こえると言い、彼もまた書き置きを残して消える・・・・・・。

ミニマルなシチュエーションのミニマルな物語だ。クイズ好きのノムラが出題するのは日本の戦後史の問題ばかりなのは偶然ではなく、砂漠や砂は、戦後日本のそれまでの経済的発展は砂の上に築かれたもろいものじゃないのかという疑義へのメタファーな気がする。男たちは怠惰に砂漠をみつめるうち、そのことに気づいてしまうのではないか。初演の1994年はバブル崩壊から数年経過しているが、まだその残滓が残っていて、豊かさはこの先も続くものだと思っていた。その終焉を予見したのがこの作品だ。当時は頭でっかちの作品として受け取られたかもしれないが、振り返ると正確に今の日本を予言していた気がする。

今回、役者の年齢とは無関係に役を割り振ったのがおもしろい。そこに違和感を感じてしまうこちら側の年功序列意識があぶり出される。

作:宮沢章夫、演出:笠木泉/東京芸術劇場シアターウエスト/指定席6400円/2023-11-19 13:30/★★★

出演:佐伯新、玉置孝匡、長谷川朝晴、細川洋平、矢野昌幸、山崎一、大石継太