『作者を探す六人の登場人物』
1921年に書かれた古典。だがまったく内容を知らず、タイトル通り六人の登場人物が自分たちを創造した作者を探す話だと思っていた。実際はかなり違っていて、ピアンデルロの既成の戯曲の稽古をしている劇団のもとに彼らがやってくる。彼らというのはとある劇作家が執筆中に放棄した作品の登場人物たちだ。父、母と4人の息子と娘。彼らは家族だが複雑な事情を抱えている。彼らは劇団の座長に誰か作品を完成してくれる作家を紹介してくれるかあるいはあなたたちで完成してほしいと懇願する……。
毎日変わり続けて忘れてしまうふつうの人間と、ひとつの状況や感情に身を捧げる登場人物ではどちらが真実に近い存在なのだろうかというのがピアンデルロの問い。その軸は「リアル」ということとは別に存在する。
この前演出した『プレイヤー』に続き長塚圭史は演じるということをメタに考え続けているようだ。その成果がオリジナルの作品どう生かされるのか楽しみだ。
父親を演じた山崎一さんは、「登場人物」という奇妙な立場の論理を説得力もって話す難しい役柄だけど見事に演じきっていた。同じくその義理の娘役の安藤輪子さんも熱演だ。一場面の登場で場を引っさらう平田敦子さんの存在感がすごい。
作:ルイジ・ピランデルロ(訳:白澤定雄)、上演台本・演出:長塚圭史/神奈川芸術劇場中スタジオ/自由席5000円/2017-11-04 18:00/★★★
出演:山崎一、草刈民代、安藤輪子、香取直登、みのり、佐野仁香、平田敦子、玉置孝匡、碓井菜央、中嶋野々子、水島晃太郎、並川花連、北川結、美木マサオ、岡部たかし