阿佐ヶ谷スパイダース『ジャイアンツ』

初老男性が夢の中みたいにぼんやり歩いていると、離婚して依頼疎遠になっていた息子と出会う。息子はぎこちない感じながら自宅に誘い、ささやかな歓待を受ける。翌日ワインとケーキをもって同じ部屋を訪ねると、そこには別の人が住んでいた。男は、不意にあらわれた目玉探偵と名乗る男とその助手とともに息子の行方を捜そうとする。彼らによれば、誰かの回想、いや傾倒の世界に入ってしまったのだという。空には巨大な目玉が浮かび、時間と空間がゆがみはじめる。 ...

KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『アメリカの時計』

『アメリカの時計』はアーサー・ミラーの後期に書かれたあまり知名度の高くない作品だ。エンタメに振り切った改訂版は興行的に成功したようだが、この舞台は改訂前のバージョンがベースになっている。舞台は大恐慌時代のアメリカ。大恐慌は名前だけであまりよくわかっていなかったのだけど、今回ちゃんと知れたのは収穫のひとつだ。1929年の株価大暴落にははじまり、GDPが恐慌前の水準に一時的に回復したのはなんと1936年で最終的には第二次大戦による軍需をまたなくてはいけなかった。 ...

阿佐ヶ谷スパイダース『老いと建築』

80歳を目前にした女性というか彼女が住む築40数年の家が主人公と言った方がいいかもしれない。亡き夫の命日で家族が集まる日。彼女にはこの家を設計した建築家の姿が見え、話すことができるが、他の人には見えない。彼は現実の建築家の幽霊というよりこの家の精霊のようだ。 ...

『近松心中物語』

『ロミオとジュリエット』も含めて広い意味で心中ものは苦手だが演出家とキャストにひかれてみることにした。 二組のカップルが主人公。まじめ一方だった飛脚宿の養子忠兵衛は偶然遊女梅川と出会い互いに思い合う仲になる。折り梅川には身請け話が持ち上がる。忠兵衛と同郷の幼なじみ古道具屋の若旦那与兵衛はおひとよしでやさしいが商売に実が入らない。彼は忠兵衛に梅若の身請けの手付け金を貸してほしいと頼まれ快く店の金を渡してしまう。与兵衛はひとりで店を出て行こうとするが彼を慕う妻のお亀もついてくる。一方、忠兵衛は行きがかりで届ける途中の公金に手をつけ、梅川を身請けする。こうして二組のカップルの逃避行がはじまる。彼らのトーンは片やシリアス、片やコミカルで対照的だが、それでも終着点に待ち受けるのはどちらも「心中」だ。 ...

『常陸坊海尊』

常陸坊海尊。初めて聞く名前だったが、源義経の従者の一人とのこと。途中で逃げ出して生き延びてその後不老不死の身となり何百年間も源平や義経の物語を見てきたように語ったという説話が残っている。 ...

『アジアの女』

富田靖子主演、作の長塚圭史本人による演出による初演の舞台を2006年にみているが。すっかり内容を忘れていた。 地震で壊滅状態の東京が舞台。余震におびえながら復興は遅々として進まない。食糧や生活必需品は配給になり不足状態が続き。自警団と称する団体による外国人に対するヘイトや暴力が横行する。今思うと、あの頃は絵空事だったが、東日本大震災を経験し台風16号通過後の千葉の惨状みた今、とてもリアルに感じた。予言的な作品といっていいかもしれない。 ...

阿佐ヶ谷スパイダース『桜姫〜燃焦旋律隊殺於焼跡〜』

四代目鶴屋南北の歌舞伎『桜姫東文章』が原作であることはそのストーリーも含めて見終わった後知った。 そうしてみると舞台をみてあっけにとられた物語展開のうちそれなりの部分が原作のお手柄だということがわかった。しかし、舞台と原作はまったく別物だ。年代が江戸から昭和の戦争前後に移しかえられていて(開演前や幕間に流れる昭和歌謡がいい)、清玄は貧しい孤児を助ける篤志家、桜姫は金持ちに見初められた元孤児という設定だ。おまけに桜姫は吉田という名でこの物語の因縁の外にいて、ギリシャ悲劇のコロス的なバンドの導きによって、自らの意志で桜姫になるのだ。 ...

『セールスマンの死』

戯曲は読んでいたがようやく舞台をみることができた。演出の長塚圭史さんがCINRA.NETのインタビューで「ほとんど演出の余地がないんです。ト書きまで細かく書き込まれているから、演出家が自分の色を出しにくい」と言っていた通りではあるが、だからこそ、戯曲をそのまま舞台に現出させるという地道な演出の力が求められているともいえる。 その演出のおかげで気づくことがいろいろあった。まず主人公ウィリー・ローマンの妻リンダはそれぞれの家族を一番愛情深く理解している一方で、実は彼の幻想の共犯者だったということ。そして、そういう幻想から自由ですべてが見えているのは仕事が続かず情けない長男ビフなのだ。ただ彼が何を言っても誰も真面目に聞こうとはしない。苦い真実をあえて知ろうとする者はいないのだ。 ...

阿佐ヶ谷スパイダース『MAKOTO』

メンバーが大量に増えた新しい阿佐ヶ谷スパイダースの第一作。 妻を医療事故でなくした水谷は、それが担当医師の個人的事情による過失だったということを知り精神の平衡を失う。水谷は、医師に会うため、オオカミタクシーに乗り込み、大久保に向かい、さらに渋谷を経由して代官山と、夜の東京を疾走する。このくだりが祝祭的でほんとうにすばらしい。町が目の前に浮かび上がってきた。水谷を気遣う入口、栗田など登場人物も愛すべき人たちだ。 ...

PARCOプロデュース『ハングマン』

イギリスで死刑が実質的に廃止された直後、1965年の物語。死刑執行人だったハリーはパブの主人におさまり、表だって死刑廃止に反対したりはしていない。そんな彼が過去に執行した男が実は冤罪でその真犯人であることを匂わせる男がパブにあらわれ、直後にハリーの娘が行方不明になる。ハリーと妻が気をもむ中、再度男が店にあらわれる……。 ...

『作者を探す六人の登場人物』

1921年に書かれた古典。だがまったく内容を知らず、タイトル通り六人の登場人物が自分たちを創造した作者を探す話だと思っていた。実際はかなり違っていて、ピアンデルロの既成の戯曲の稽古をしている劇団のもとに彼らがやってくる。彼らというのはとある劇作家が執筆中に放棄した作品の登場人物たちだ。父、母と4人の息子と娘。彼らは家族だが複雑な事情を抱えている。彼らは劇団の座長に誰か作品を完成してくれる作家を紹介してくれるかあるいはあなたたちで完成してほしいと懇願する……。 ...

『プレイヤー』

新設されたばかりの地方の公共劇場。そこで上演される新作の稽古場が舞台。若い女性が失踪しやがて人里離れた山小屋で死体が発見される。それとともに彼女が生前親しかった人々に奇妙なことが起きる。時折彼女としか思えない口調で話し始め、当人はそのことを覚えていないのだ。 ...

阿佐ヶ谷スパイダース『はたらくおとこ』

リンゴ農園そしてそのあとはじめた工場も失敗し、仕事がなくなりながらいくところがなく集まり続ける男たち。しかしとことん渋いリンゴを作るという夢は失っていなかった……。 ...

葛河思潮社『浮標』

休憩2回挟んで4時間の長尺。舞台の上でとりたてて何かがおきるわけではないのに、飽きることはまったくなかった。 戯曲の冒頭に「時…現代」と書いてあるが、その現代というのは1940年。太平洋戦争がはじまる前年だが、すでに日中戦争は泥沼に入り、物資も不足するようになっていた。主人公の画家久我五郎は結核を患う妻美緒の療養のため千葉市郊外の海岸で暮らしている。彼自身は創作意欲を失い、絵本の仕事で食いつないでいるが、家賃も満足に払えず借金を重ねている。役者は12人登場するがこの夫婦2人の物語といっていい。 ...

『かがみのかなたはたなかのなかに』

こどももおとなも楽しめる芝居という触れ込み。舞台の手前と奥に境界があって、向こう側が鏡の中という設定。手前の世界の海軍士官タナカと向こう側のカナタ。二人は互いの存在に気がつき、友人になる。毎日ピザの配達にやってくる配達員は実は女性でコイケと名乗った(長塚圭史の女装)。彼女にも鏡の中の分身がいて名前はケイコ、松たか子が演じている。自信家で積極的なコイケと引っ込み思案で自己評価の低いケイコなにかと対照的な二人だが、男たちはどちらもケイコに恋をし、コイケの存在を邪魔に感じ始める。彼らはコイケを亡き者にし、そのあとでどちらがケイコと恋人になるか決めることにする……。 ...

葛川思潮社『背信』

おお、メロドラマだ。いろいろ演劇をみてきたけど、演劇はメロドラマにはじまり、メロドラマに終わるんじゃないか。最近そんな気がしている。メロドラマというのはコンテンツというよりメディアなのだ。最小限の背景説明でその上にいろいろなものをのせられる。 ...

『音のいない世界で』

欲をいえば。 と感想の冒頭に書きたくなる芝居だった。音楽や鳥のさえずりなどの「音」が失われてしまった世界、その音を取り戻すためにはぐれて別々に旅をする夫婦の物語。とてもよくできた大人のメルヘンだった。登場するキャラクターがそれぞれ個性的で子供がみても十分楽しめる内容だが、欲をいえばもう少し深みや苦さがあったほうがよかったと思う。欲をいえば、最後の歌はあまりにも耳慣れたあの曲じゃないほうがよかった。いくらアレンジや歌詞を変えても思わず腰が浮いてしまうメロディーは同じだ。 ...

『南部高速道路』

原因がわからないまま高速道路で果てしない渋滞にまきこまれる人々。解決の見込みがないまま何日も経過し最初はいがみあっていた人々の間には連帯がうまれる。やがて一年の月日が流れ…… ...

PARCOプロデュース『テキサス』

作:長塚圭史、演出:河原雅彦/PARCO劇場/指定席7350円/2012-04-07 19:00/★★ 出演:星野源、木南晴夏、野波麻帆、岡田義徳、福田転球、政岡泰志、伊達 暁、吉本菜穂子、山岸門人、湯澤幸一郎、河原雅彦、高橋和也、松澤一之、ブライアリー・ロング ...

『ガラスの動物園』

作:テネシー・ウイリアムズ(翻訳:徐嘉世子)、演出:長塚圭史/シアターコクーン/A席7000円/2012-03-31 18:30/★★★★ ...