M&Oplaysプロデュース『少女ミウ』
小劇場の岩松了はシアターコクーンなど中劇場の商業的な舞台の時とは別物だ。いや、不可解さというのは共通している。ただし、中劇場では登場人物の内面にとどまっている不可解さが小劇場では物語の前面にしみだしてくる。
舞台では二つの時期と場所を行き来する。
ひとつは震災、原発事故から間もない避難区域。事故の責任を感じて自主的に避難区域内で生活するある責任者の家族。当人は失踪してしまっている。残された家族(妻、長女、次女、長女の夫)の元に父の隠し娘ユーコがやってくる。それを知らされてないのは次女ミウだけだった。そしてまったく唐突にあらゆる文法を無視したような悲劇が発生する。これには驚いたし茫然としてしまった。
もうひとつはそれから数年後おそらく2017年のテレビ局。ミウとユーコ二人の娘を主軸にして「復興」をテーマにした番組を放送しようとしている。ユーコはミウが語るべき話を自らの話として語ってしまう。入り交じるフェークとトゥルース。その番組の若手キャスターが広沢。彼には過去にミウたちとのかかわりがあるようだ。ラスト手前のミウと広沢ふたりの食卓シーンはドラマなのかリアルなのか……。
テレビ局のシーンでは本筋と関係ないがちゃがちゃしたやりとりがいかにも小劇場的で微笑ましい。若手の俳優陣は岩松了の観念的な台詞をきちんと消化していてすばらしかった。やはり、岩松了には小劇場の芝居をやってほしい。
作・演出:岩松了/ザ・スズナリ/指定席5500円/2017-05-27 19:00/★★
出演:堀井新太、黒島結菜、川口覚、富山えり子、金澤美穂、篠原悠伸、藤木修、新名基浩、岩井七世、安澤千草