『シブヤから遠く離れて』
あまりにタイトル(ゴダールの『ベトナムから遠く離れて』のもじりだ)になじみがあって、観たことがあると勘違いしていた。内容をまったく思い出せないのもど忘れしているのだと思い込んでいた。実際は初演の蜷川幸雄演出版は観ていなかったわけだ。つまり今回の作者の岩松了本人演出版が初見。
もうひとつの勘違いが渋谷が舞台の物語ということで「遠く離れて」なんだから違うじゃんと気がついたが、見てみたら実は渋谷駅からほど近い南平台あたりの住宅街にある洋館が舞台で、実はそれは勘違いではなかった。
物語は、事情があってその洋館に一時的に身を隠している元娼婦のマリーと、かつてその洋館に住んでいた親友家族との間の思い出から抜け出すことのできない青年ナオヤのすれ違いを描いている。岩松了お得意のノワールメロドラマだ。けっこう心に残るいいシーンのある舞台だった。
たぶん岩松作品ははじめてだと思われるたかお鷹さんが非常に自然に岩松作品独特のねじれたセリフをきわめて自然にこなしていたことに驚いた。年の功なのだろうか。この水準にそろえて岩松作品を上演できればリアリティの強度が格段に上がる気がする。反面若い男性陣は声が今ひとつでてなくてセリフが聞き取りずらかったかな。
作・演出:岩松了/シアターコクーン/S席10000円/2016-12-10 18:30/★★
出演:村上虹郎、小泉今日子、鈴木勝大、南乃彩希、駒木根隆介、小林竜樹、高橋映美子、たかお鷹、岩松了、豊原功補、橋本じゅん