ナイロン100℃『消失』

消失

11年前の初演を見ているし、キャストはその時とまるっきり同じだし、3年前に戯曲を読んだばかりだし、新鮮味を感じないんじゃないかと危惧していたが、ぼくの忘却力は思っていたより偉大だった。初演同様いやそれ以上に鮮烈な観劇体験だった。というのには、11年前より現在のほうが戦争やテロ、またそれによる文明崩壊への恐れがリアルになっていることもあるかもしれない。

ラスト。6人の登場人物のうちの亡くなった3人の人物が舞台に一瞬だけ現れて、去った後影だけが残る演出に背筋がぞわぞわした。

兄のチャズ役の大倉孝二は実年齢が役の年齢に近づいた分、初演より役にはまって熱のこもった演技だった。

今年の観劇は本数的にも作品的にも今ひとつだったが、最後に素晴らしい舞台を見られた。

作、演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ/本多劇場/指定席6900円/2015-12-26 18:00/★★★★

出演:みのすけ、大倉孝二、犬山イヌコ、三宅弘城、松永玲子、八嶋智人、(声)池谷のぶえ