地点『桜の園』

地点『桜の園』

作:アントン・チェーホフ(神西清訳)、演出:三浦基/吉祥寺シアター/指定席(『三人姉妹』との)セット券6500円/2008-10-18 19:30/★★

出演:安部聡子、岩澤侑生子、谷弘恵、石田大、小林洋平、大庭祐介

先週に続いての地点のチェーホフ。先週の『三人姉妹』はもともとストーリーや登場人物を把握していたが、今回の『桜の園』に関しては戯曲を読んだことすらなくまったくの初見。というのも、『かもめ」と『ワーニャ伯父さん』の戯曲を先に読んでしまって舞台を楽しめなかった経験から、四大戯曲のうち残りの2つ『三人姉妹』と『桜の園』は事前知識や先入観なしにみようと心に決めていたからだ。『三人姉妹』は何年か前に望みを果たしたが、『桜の園』はなかなか機会がなくて、男の子の一番大切なものを守り通しているような感じになってきていたが、ようやくその日がやってきたわけだ。

さて、先週の『三人姉妹』はいわば前哨戦だったわけだが、その奇抜さに度肝を抜かれつつも楽しめたが、はたしてこれを『三人姉妹』をまったく知らない人がみてもおもしろく感じられるか疑問にも思った。今回の『桜の園』でその疑問の答えが間接的に得られるわけだ。

ラネーフスカヤをはじめとした地主家族が舞台中央に陣取って、みんなでずっと窓枠を掲げているというのだけでも十分奇妙だけど、全体的に『三人姉妹』に比べるとずいぶんと抑制のきいた演出だった。むこうには『三人姉妹』を知らなくても楽しめるギミックがいくつかちりばめられていたけど、こちらはほとんどないので、逆に『桜の園』童貞にはちょっとつらい舞台だったかもしれない。というのも、たぶん地点がやろうとしているのは『桜の園』をそのまま舞台に上げるというより、その批評を演劇化することじゃないかと思えて(そもそも変な抑揚とリズムのセリフはどうしてもその意味内容に対する批評になってしまう)、先週の『三人姉妹』がとてもよく理解できたのもそれが芯をついた批評だったからだと思う。やはり、批評を理解するには事前にその対象を知っておく必要があるようだ。

というわけで、事後になってしまうがちょっとこれから『桜の園』の戯曲を読んでみようと思う。