『恋する妊婦』

作・演出:岩松了/シアターコクーン/A席7500円/2008-02-16 19:00/★★★

出演:小泉今日子、大森南朋、鈴木砂羽、荒川良々、姜暢雄、平岩紙、森本亮治、佐藤直子、佐藤銀平、中込佐知子、米村亮太朗、大橋智和、安藤サクラ、風間杜夫

94年の再演ということだけど初見。

大衆演劇の一座が舞台というと、もうそれだけでストーリーが細部に至るまで想像できてしまいそうなのだけど、もちろん岩松了はその想像を完膚なきまでに裏切ってくれた。

座長の妻であり、一座の裏方作業をとりしきる、座員から「ママ」という呼ばれる女性が主人公。彼女は現在妊娠8ヶ月だ。ロングランの公演の真っ最中、女優を連れて逐電したかつての花形役者が、もういちど一座に戻りたいという泣き言をいれてくる。彼は、一座の中の何人かの女性と浮き名を流し、「ママ」もまたその中のひとりだった。

「ママ」の最後の残酷な決断。一瞬にして色を失った髪。彼女が選んだもの、そして捨てたものはなんだったのか。

岩松了のセリフ回しはやっぱりすごい。登場人物たちがそれぞれに自分の感情を伝えようとあがいて、それは失敗するのだけど、その失敗した言葉がなんともいえず美しい。最近の作品より90年代に書かれた作品の方が、失敗の向こうにあるものを想像しやすくて、だからぼくは好きなんだと思う。

特に、「ママ」を演じた小泉今日子と一座の女優さつきを演じた鈴木砂羽がからむシーンがよかった。こういう言い方はなんだが、とにかく二人ともとてもかわいらしかったのだ。できればもう少しいい席でみたかった。