遊園地再生事業団『ニュータウン入口』
作・演出:宮沢章夫/シアタートラム/指定席4500円/2007-09-29 19:00/★★★★
出演:若松武史、鎮西猛、上村聡、時田光洋、三科喜代、山縣太一、田中夢、橋本和加子、鄭亜美、杉浦千鶴子、佐藤拓道、齋藤庸介、南波典子、二反田幸平、今野裕一郎
安全で安心で、美しい街、ニュータウン。そこに自分たちの土地を求めようとする若夫婦。そこにノイズのように立ち現れる、かつての遺跡捏造者F、そして別のニュータウンで陰惨な事件(酒鬼薔薇聖斗の事件がイメージされている)をおこした兄をさがす弟たち。という表層の物語の下には神話的な象徴の層があって、約束された土地という旧約聖書のモチーフ(不動産屋の名前はカイン不動産だし物件の名前はカナンシリーズだ)とギリシア悲劇のアンティゴネの物語(兄をさがす弟たちの名前はそのものずばりアンティゴネとイスメネだ)がときおり土の下から浮かび上がってくる。
宮沢章夫さんの最近の作品はこういう二層構造をとっていることが多いが、今回はその二つの層が見事な連係プレーをしていた。兄をさがす兄弟と「人間の作った規則より神の定め給うた掟」というアンティゴネのテーゼ。絶えず登場するマイムマイム(歌詞が「あなたたちは喜びのうちに救いの泉から水を汲む」という意味だと初めて知った)から暗示される約束された土地イスラエル。そしてラスト、ニュータウンの風景がそのイスラエルの風景にかわってゆく。
終演後のムーンライダーズ鈴木慶一さんとの対談もおもしろかった。