現代能楽集III『鵺/NUE』

作・演出:宮沢章夫(監修:野村萬斎)/シアタートラム/指4000円(プレビュー公演)/2006-11-04 17:00/★★

出演:上杉祥三、若松武史、中川安奈、下総源太朗、半田健人、上村聡、鈴木将一朗、田中夢

海外公演を成功裏に終えた「演出家」および俳優たちの一行がトランジットルームに足止めされる。そこで彼らは黒ずくめの服を着た謎の男に出会う。彼こそが「鵺」なのだ。タバコの煙の中から浮かび上がる過去の記憶、かつてあったという「新宿」という街とそこで上演された失われた劇の記憶だ。

能の謡曲『鵺』を現代のどこともしれぬ国の空港にあるトランジットルームで再現しようとした物語の骨格はほんとうにすばらしい。だが、その物語の中にうまく入り込めなかったぼくがいて、それは朝からほとんど腹に入れていなかったせいかもしれないけど、あえて舞台の方に原因を求めると、トランジットルームで語られる極端に記号化された言葉と唐突に挿入される劇中劇(清水邦夫の戯曲からの引用)の中の熱っぽい言葉との間に違和感というか異物感を感じたからかもしれない。鵺というよりキメラ的なつぎはぎ感を感じたのだ。

若松武史の演技というか、ただそこにいるだけでも存在感はやはりすごい。