劇団♪♪ダンダンブエノ双六公演『砂利』
作:本谷有希子、演出:倉持裕/スパイラルホール/指定席6500円/2007-07-22 19:00/★★★
出演:坂東三津五郎、田中美里、片桐はいり、酒井敏也、山西惇、近藤芳正
小学生のときいじめていた女の子からの復讐を執拗に恐れている男。彼女はあなたが最高に幸せを感じるときにまたきますといって転校していった。そして毎年送られてくる血文字の年賀状。おりしも美しい妻が妊娠し、世間的には幸せの絶頂といっていい時期だ。
荒唐無稽でとりつくしまのない恐怖だけど、その恐怖だけが男が持つことのできるリアルな感情だった。介護していた父親が亡くなって以来、あるいはそのもっと前から男は感情的にからっぽだったのだ。そこへ、妻の姉が訪ねてくる。彼女こそが、そのいじめていた少女だった。だが、彼女は昔のことはまったく覚えていないという……。
幕開き直後は登場人物にまったくリアリティを感じられずどん引きだったのだが、あっという間に舞台に引き込まれてしまった。そこには箱の中の宝物のようにリアルが隠されていたのだ。やはり本谷有希子はすごい。
坂東三津五郎は、情けない中年ニートの役をちょっとどうかと思うくらい熱演していた。アフロヘア、サングラス、ラメ入りジャケットでラップを歌ったり、エクササイズボールと戯れたり、もう何でもありだった。
はじめてのスパイラルホールはこじんまりとしていながらもゆったりと席の前後を確保してあって、いい劇場だった。