酉島伝法『皆勤の徒』
はじめてお金を出して買ったKindle本。
暴走するナノマシーン、人格のデジタル化、サイバーパンク的仮想世界、さまざまな異形に進化した人類、知性をもつ惑星など最先端のSFのアイディアがてんこ盛りの上に、「塵機」、「兌換」、「形相」など用語が独特で初見では字面からぼんやりと想像することしかできず、わからないままにSFというよりカフカ的な不条理小説として読み進めたのだった。巻末の大森望さんの解説を読んでようやく腑に落ちた。
この基本設定をベースに、命をすり減らして働くサラリーマンペーソスものの表題作、異形の生物が降り注ぐ世界の学園もの『洞の街』、巨大な巻き貝のような生物の中に棲む昆虫型人間たちによるハードボイルド探偵もの『泥海の浮き城』、そして比較的オーソドックスなSFアドベンチャー『百々似隊商』というバラエティー豊かな4作が収録されている。
わからないけど、というか、わからないからこそ、おもしろかった。日本国内だけにとどめておくのはもったいないので、英訳をだして世界に広めてほしい。各用語がどう訳されるか楽しみだ。