鏡明『不確定世界の探偵物語』
見慣れた街並みが突如として変わったり、目の前で話していた男が、見知らぬ人間に変わってしまうことが日常的におきるような世界が舞台。それはエドワード・ブライスという実業家が発明したワンダーマシンという一種のタイムマシンによってもたらされたものだった。ブライスは世界を少しずつよい場所に変えるという目的のもとでワーダーマシンを操作し世界を変え続けているのだった。
主人公はノーマン・T・ギブソンというしがない私立探偵。八編からなる連作短編という形で、依頼される事件は別だが、結局はワンダーマシンとエドワード・ブライスの謎へと迫っていく。
作者は日本人で日本語で書かれた小説だが、舞台は英語圏のどこかの都市になっている。主人公は日本生まれの日系人だが、日本はワンダーマシンの作用でまるごと消滅している。
あとがきによると、著者は、既存の時間旅行SFが、過去を変えてはいけないという規則にしばられすぎていることに不満をもっていて、固定化されて身動きできない世界でなく自由に変化する世界を描こうと思ったそうなのだ。その気持ちはすごくよくわかる。
★★★