入不二基義『哲学の誤読―入試現代文で哲学する!』

哲学の誤読 ―入試現代文で哲学する!

大学入試の問題に出題された4人の哲学者野矢茂樹、永井均、中島義道、大森荘蔵の文章を題材に、解説者、出題者、本書の著者、そしてオリジナルの文書を書いた執筆者自身、というさまざななレベルの誤読を対照することにより、それぞれのテーマを深く読解する。

本書に載せられた4つの文章は(具体的には、他人の心、過去、未来の)実在論と非実在論の間の対立がうかがえるものばかりなのだけど、誤読でない妥当な文意というものは実在するのかどうかも哲学のテーマになりうるような気がしてきた。まず到達可能かどうかという対立があって、到達可能でない場合に、その実在性が俎上にのぼってくるのだろう。

それはおいておいて、本書を読んでわかるのは、むしろ誤読がオリジナルの文意以上に深くその問題をえぐりだしていることもありうるということだ。誤読は生産的に行為になりえて、ぼくたちが文章を読むのは(特に文芸作品に関しては)そういう生産的な誤読をするためなのかもしれない。