岩松了プロジュース『傘とサンダル』
作・演出:岩松了/ザ・スズナリ/自由席3400円/2003-05-31 19:00/★★
出演:関寛之、伊藤留奈、早船聡、谷川昭一朗、増井太郎、玉置孝匡、中込佐知子、宇和川士朗、山崎えり、川本絢子、じょじ伊東、酒井健太郎、坪内有子、戸田昌宏、矢沢幸治、清田正浩
ぼくがはじめて観た芝居は岩松了プロジュースの『スターマン』で、それに感動して今のように芝居を観る習慣がはじまったのだけど、それから何と5年ぶりの岩松了プロジュース作品だ。岩松了は、最近大きな劇場で高い料金をとる芝居が多く、そのわりに今ひとつなことが多いと思っていたので、小劇場らしい小劇場で、しかも1996年に上演した芝居の再演ということでとても期待していたのだった。
高名な写真家が砂丘のある場所(鳥取か?)に遺した別荘を買うために下見にやってくる夫婦。妻のほうは盲目だ。その別荘には、そこから見える夕陽を撮るため、持ち主だった写真家の弟子筋にあたる人間やその関係者が何人か泊まっている…。そして、理不尽な怒りの衝動が、軽いいたずら心をはらんだ偶然と結びついて、惨劇がうまれる。ストーリー展開はすばらしいと思うのだが、主要な登場人物が誰も彼もシニカルで、誰にも共感できないままだった。ぼくにとって、いい芝居というのは、舞台の上にある場にいたいという気持ちにさせてくるものだが、今回はそこから逃げ出したい気持ちの方が大きかった。
同じ岩松了の『虹を渡る女』とほぼ同じ台詞を盲目の妻が口にしていた。時期的に考えると、『傘とサンダル』が本家で、『虹を渡る女』がパクリということになるけど、芝居としては『虹を渡る女』の方が断然好きだ。
『スターマン』で兄妹だった役戸田昌宏、中込佐知子の二人が今回も姉弟役だったのことに、ちょっとした符合を感じた。