M&Oplaysプロデュース『結びの庭』

結びの庭

岩松版『家政婦は見た』かと思いきや予想もつかない展開。

弁護士水島慎一郎と経団連会長の娘瞳子はかつて瞳子が容疑者となった殺人事件の弁護で知り合い、無罪を勝ち得、その後愛しあうようになり結婚した。庭付きの古い洋館に居を構え幸福な日々を迎えているかのように見えたある日、昔の事件の真相を知っているという男が現れる……。

けっこう、家政婦丸尾役の安藤玉恵さんが重要なポジションだ。ストーリーと直接には関係ないんだけど、天然ですっとぼけたようなキャラクターのおもしろさ、そして主人夫婦特に瞳子から彼女に投げかけられる言葉の中に突如混じるトゲとそこから生まれる緊張感が、各シーンをリードしていた。

以下ネタバレ。

ストーリー的には途中までオーソドックスなサスペンス劇の体をとっているんだけど、後半夢の中のシーンが入り込んで幻想的になってくる。丸尾さんの結婚宣言でその期待感は否応なく高まる。当然それはクライマックスの悲劇へとつなげる絶妙な味付けだと思うのだが、悲劇へのハシゴはラストで驚くべきあっけなさではずされる。最後はセットが取り払われて夫婦二人の微笑ましい、罪の意識を共有することで二人の愛情はより深まったことを示すだけのシーン。突然の幸福感。なんか昔ハリウッド映画の監督がハッピーエンドにしろという指示を受けて抗議のために撮ったシーンみたいだった。観ている誰もがあっけにとられたはずだ。序盤にでてきた瞳子が寝言で言ったという「そこは春ですよ」という言葉が蘇ってきて、ああ春なんだなとしみじみ思うばかりであった。

作・演出:岩松了/本多劇場/指定席6800円/2015-03-07 19:00/★★

出演:宮藤官九郎、麻生久美子、太賀、安藤玉恵、岩松了