『温室』
病人を収容する国立の施設が舞台。そこでは代表のルートを頂点に専門職員、一般職員、患者という厳然としたヒエラルキーが存在し、患者は番号で呼ばれている。そんな中、患者6457号が死亡し6459号が出産するという想定外の事件が連続して起きる……。
冒頭部の不条理さとブラックな笑いに大いに期待をふくらますが、物語は政治的な寓意をはらんでシリアスな方向に展開していく。この戯曲が書かれた1958年イギリスの政治的寓意。それを2012年の日本でリアルに感じるためにはちょっと補助線が必要だったかもしれない。
赤い家具ばかりを集め、中央部を回転させる演出は、舞台に躍動感をうんで、とてもよかった。ワンシーンしか登場しないが、半海一晃の演技は怪演としかいいようがなくて、目を離せなかった。
作:ハロルド・ピンター(翻訳:喜志哲雄)、演出:深津篤史/新国立劇場小劇場/指定席4800円/2012-07-08 13:00/★★
出演:高橋一生、小島聖、山中崇、橋本淳、原金太郎、半海一晃、段田安則