オフィスコットーネプロデュース『ザ・ダーク』

ザ・ダーク

ホラーっぽいタイトルだがさにあらず。現代の家族劇。2004年にロンドンで初演されている。

とあるストリートに隣り合って住む、倦怠期の中年夫婦と引きこもりの息子、赤ん坊が生まれたばかりの若夫婦、そして幼児性愛の濡れ衣を着せられた男とその置いた母親。ふだんあいさつもかわさないこの3組の家族が停電の夜繰り広げるつかの間のふれあいを描く。

ある家族の会話が別の家族にちがう文脈で反復される対位法的なセリフ回しがおもしろい。

この作品がまさにそうだが、英米の現代劇には、シチュエーション、ストーリー展開や登場人物がユニークというのではなく平凡な人々の平凡な営みのちょっとした乱れにフォーカスをあてた作品が多い気がする(日本で紹介されるものにそういうものが多いのかもしれないが)。そして、観た後にぷっつりと舞台とのかかわりが切れるのではなくそのままゆるやかにまわりの世界や社会への問いかけが残る感じがするのだ。

もっとこういう海外演劇が観たい。

ハマカワフミエさんの歌う子守歌がよかった。

作:シャーロット・ジョーンズ(飜訳:小田島恒志、小田島則子)、演出:高橋正徳、プロデューサー:綿貫凜/吉祥寺シアター/指定席4800円/2017-03-11 19:00/★★★

出演:中山祐一朗、小林タカ鹿、松本紀保、碓井将大、ハマカワフミエ、福士惠二、山本道子