遊園地再生事業団『トータル・リビング 1986-2011』

遊園地再生事業団『トータル・リビング 1986-2011』

作・演出:宮沢章夫/にしすがも創造舎/自由席4500円/2011-10-15 19:30/★★★

出演:上村聡、牛尾千聖、大場みなみ、上村梓、今野裕一郎、時田光洋、野々山貴之、橋本和加子、矢沢誠、永井秀樹

震災、原発事故後の2011年の現実と、バブル前夜、すべてが華やかで浮ついていた1986年夏の現実が、対比的に描かれている。華やかといっても、その年の4月には、アイドルの飛び降り自殺があり、チェルノブイリの事故が起きている。ただみなすべてを忘却して浮かれていただけなのだ。

ほぼ45分ずつの3つのパートにわかれていて、その間に休憩が入る。一番最初のパートは、前作以上に物語を拒否する感じで、メタなレベルを漂い続けたが、2番目のパートの開始とともに、地上というか、舞台は屋上だが、その高さにおりていき、物語がはじまる。はじまるといっても、どっぷりと物語の中にひたるのではなく、終演後のアフタートークにおけるゲストいとうせいこうさんの言葉を借りれば、「物語の兆し」だ。兆しがふいっと立ち上がり、また寝る。物語への飢えを逆に喚起させられる、そのバランス感覚が絶妙だった。3つの小さな物語の兆し。みずからの欠落をうめてもらうために「忘却の灯台守」のもとを訪ね続ける「欠落の女」。南の島をさがしてさまよう映像作家。そして、映像学校の生徒たちが撮っている86年が舞台の映画の中の、屋上のパーティーとビンゴ大会。

劇場は学校のような敷地の中の体育館のような建物だった。なんだか逆に新鮮で、学生だった86年当時にぼくもタイムスリップしそうな勢いだった。

終演後のいとうせいこうさんを迎えてのアフタートークも最高だった。