『タンゴ - TANGO - 』
作:スワヴォミル・ムロジェック(翻訳:米川和夫、工藤幸雄)、演出:長塚圭史/シアターコクーン/S席9000円/2010-11-13 19:00/★
出演:森山未來、奥村佳恵、吉田鋼太郎、秋山菜津子、片桐はいり、辻萬長、橋本さとし
ポーランドの劇作家ムロジェックにより1965年に書かれた戯曲。饒舌なセリフでドライブされるとても観念的な作品だった。ある家族(かなり戯画化して描かれている)の物語。使用人と半ば公然と不倫をする母親、それを見てみないふりをしながら実験演劇にうつつをぬかす父親、使用人はすっかり友達気取り、祖母はトランプに夢中、祖母の弟は甘んじてこの状況を受け入れている。破壊された「秩序」を再建するため一人息子アルトゥルは家族を相手に反革命を決起し、従妹アラと伝統的な結婚式を挙げようとする……。
すべてが許されてしまった後、人はどう生きればいいのかという、後期近代に普遍的なテーマのようだけど、これが現代でなく、1965年のポーランドというまだ全体主義的な抑圧が続いていた社会で書かれたということの意味を考えてみなくはいけないのかもしれない。アルトゥルの反革命は当然のように自滅し、結局「肉体」が勝利をおさめる。ある意味共産主義革命の帰結を描いたようにもとれるし、いろいろ図式的な読み解きは可能だ。ただ風邪でゆるんだ頭にはちょっとつらかったかな。
タンゴというタイトル通り、最後に登場人物の二人がタンゴを踊る。ふつう予想される二人ではなくまったく別の二人によって踊られるのだ。この場面がとにかく圧巻。シニカルでおもしろかった。
森山未來は観念的なセリフをちゃんと自分のものとして発していてよかったが、それ以上にベテランの辻萬長がいい味を出していた。