KAATカナガワ・ツアー・プロジェクト『帰ってきた冒険者たち 闇に落ちたカナガワを救え!』

先日観た『冒険者たち』の再演と同じ座組による続編。本作では、前回共同演出を務めた大澤遊が単独で演出を担っている。
物語は前作の直後から始まる。現代の神奈川県に迷い込んだ三蔵法師一行は、いまだ元の世界に戻れずにいる。ところが、彼らを助けたはずの神奈川県の道祖神が闇に堕ち、海老名に絢爛な“ニュー国分寺”の七重塔を建立。その反射光によって県内は異常な熱波と渇水に見舞われ、社会は混乱に陥る。三蔵法師と猪八戒は捕らえられ、残された孫悟空たちは仲間を救うべく県内各地を奔走する。
大澤演出による今回の大きな見どころは、人形を用いた文楽的な演出だ。不在の猪八戒も人形として登場する。人形操作が交差する場面は、シリーズに新たな質感をもたらしていた。舞台上のレイヤーが増えたことで、物語の寓話性とユーモアがいっそう際立つ。
また、本作では現実の政治的テーマにも踏み込む。横浜市や川崎市が「特別市」として神奈川県からの独立を志向する動きに対し、県民の心を一つにまとめたい——それが道祖神の願いとして描かれる。もし両市やもうひとつの政令指定都市である相模原市が独立すれば、税収面などで県は大きな打撃を受け、まさに神奈川芸術劇場のような文化施設の維持さえ危うくなるかもしれない。実は切実なメッセージを含んでいる作品だ。
総じて、前作以上に充実した内容だった。とりわけ、「三蔵法師を食べると言うこと」と「食べようと思うこと」のどちらが悪いのかをめぐるやりとりは、抱腹絶倒の名場面。物語の進行とは直接関係のないこうした脱線こそが、舞台ならではの醍醐味だ。
作:長塚圭史、演出:大澤遊/神奈川芸術劇場中ホール/メインシーズンパスポート(35700円)/2026-02-21 16:30/★★
出演:柄本時生、菅原永二、佐々木春香、長塚圭史、成河、角銅真実(音楽・演奏)