猫のホテル『ピンク』
なんと2010年以来の猫のホテル。30周年記念公演とのこと。劇中のセリフに、季節が変わるたび自分が置いていかれているような気がする、というのがあるのだが、みなさん驚くほどお変わりなく、相変わらず絶妙な笑いを繰り広げていて、誰も置いていかれてはなかったと思う。
家庭教師の大学生カヨと生徒ミツコの、世代のことなる女性二人の数十年にわたる人生と交流を描いた作品。カヨが編集者の仕事をやめミツコが離婚したあと二人は再会し、遠くのまちでいっしょに塾をはじめる。しかし、厳格なカヨと人好きがして口の軽いミツコの間には亀裂が走り始める・・・・・・という昭和の光と影(今回は主に影だが)を描いた作品。ストリートというよりその各場面に挿入される笑いがすばらしい。カヨが編集者として訪れる作家の場面は、作家やその娘婿の付き人がカヨに対する意地悪さとお互いや植木屋との間のにこやかな親密さが対比的に描かれるんだけど、なんとも言えず可笑しい。その可笑しさをうまく説明できない。
開演前の岩本靖輝さんのアナウンスで記憶が蘇った。変わり続けることも価値があるが、変わらずにいることも貴重だ。そんなことを感じさせる舞台だった。古くからのメンバーに加えて、今回外部参加の尾上寛之さんが上手だった。
作・演出:千葉雅子/ザ・スズナリ/指定4500円/2021-10-09 18:00/★★★
出演:佐藤真弓、千葉雅子、尾上寛之、中村まこと、市川しんぺー、森田ガンツ、村上航、(声)岩本靖輝