M&Oplays プロデュース『市ヶ尾の坂——伝説の虹の三兄弟』

市ヶ尾の坂

1992年の初演から26年ぶりの再演とのこと。

田園都市線市ヶ尾駅からちょっと離れた一軒家に住む三兄弟。かつての田園地帯も今や車がけたたましくゆきかう場所になっている。そんな彼らの家を頻繁に訪れる近所の魅力的な人妻。いわば、彼女は三兄弟のアイドルだ。彼らはそれぞれ、まるでかつての騎士のように恋愛感情とは別の次元で彼女を崇拝しているのだ。

すばらしいシーンがいくつもある。長男(大森南朋)が語る三つの石ころを並べる話、人妻(麻生久美子)の語る三連水車の思い出、そして、彼女が浴衣に着替えて階段を降りてくるシーン(このシーンで三兄弟は実は亡くなった母親の面影を彼女に求めていることがわかる)、

平成の初めが舞台の作品だが、平成が終わろうとする今、この作品の中に描かれたものはすでに失われてしまっている。花火大会。そしておそらくは彼らの住む家。その変化の足音が窓をあげたときの車の騒音で表現されていた。いわば岩松版『桜の園』とでもいうべき作品だった。今度また市ヶ尾にいってみたくなった

作・演出:岩松了/本多劇場/指定席6500円/2018-05-26 19:00/★★★

出演:大森南朋、麻生久美子、三浦貴大、森優作、池津祥子、岩松了