PARCOプロデュース『ハングマン』

ハングマン

イギリスで死刑が実質的に廃止された直後、1965年の物語。死刑執行人だったハリーはパブの主人におさまり、表だって死刑廃止に反対したりはしていない。そんな彼が過去に執行した男が実は冤罪でその真犯人であることを匂わせる男がパブにあらわれ、直後にハリーの娘が行方不明になる。ハリーと妻が気をもむ中、再度男が店にあらわれる……。

日本では議論すら進まずかえって死刑判決の件数が増えている現状なのに、50年以上前にすんなり死刑を廃止できたイギリスはすごい。

この作品ではいったん観客をハリーの共犯者にしながらそれを突き放すんだけど、そこで観客の倫理観が完全に糾弾されるんじゃなく、宙吊りにされたままなのがおもしろい。ちょうど処刑された後の死体みたいに。

最後にハリーがつぶやくこれからさみしくなるなぁというセリフがとてつもなくブラックだ。さすがブラックユーモアの国イギリス。感服した。

作:マーティン・マクドナー(飜訳:小川絵梨子)、演出:長塚圭史/彩の国さいたま芸術劇場大ホール/指定席7800円/2018-05-12 18:00/★★★

出演:田中哲司、秋山菜津子、大東駿介、宮崎吐夢、大森博史、長塚圭史、市川しんぺー、谷川昭一朗、村上 航、富田望生、三上市朗、羽場裕一