サンプル『ブリッジ』
1月にやっていたワークインプログレスの本公演。続編かと思ったが、登場人物や設定はほぼ共通しているものの、前作で古屋隆太が演じ最後に死を遂げるドクターという教祖的なキャラクターの存在がなかったことにされ、そのかわりに古舘寛治が演じるジョージというまったく別のキャラクターが教祖になっている(古舘さんはすっかりテレビで活躍する名バイプレーヤーになってしまい、サンプルへの出演はほんとうに久しぶりだ)。よく似た別の平行世界の物語という感じだ。
コスモオルガン協会というカルト団体主宰のイベント会場が舞台で観客はその参加者という体なのは共通している。だが、前作はイベントであるということを貫徹して、自分がほんとうにイベント参加者のような気がしていたたまれなくなってしまい、自分が演劇をみてきているということを思い出す必要があったが、今回は最初イベントからはじまるが、過去の身の上話や未来の神話的な物語になって、あれっと疑問に思うが、実はそれもイベントの一部という設定なのだ。つねにイベントだということを思い出す必要があるのが対照的でおもしろい。両方みた人にだけわかることだが。
ワークインプログレスはカルト集団の本質にせまろうとしている感じがあって今回はそれを突き詰めるのかと思っていたがむしろ物語をふくらませて演劇にしていく方向だった。キャラバンのシーンはどれも詩的でよかった。
今回のイベントはコスモオルガン協会の10周年記念ということだったが、劇団サンプルも10周年、そして今回をもって劇団としての活動を終えるらしい。そうしてみるとラストでジョージがつぶやく「やっぱりここに線をひかきゃいけないのかな」と自分とそれ以外のメンバーの間に線を引く仕草に特別な意味合いを感じてしまう。
今後の松井周さん個人の活動に期待していきたい。
作・演出:松井周/神奈川芸術劇場大スタジオ/指定席3500円/2017-06-16 19:00/★★★
出演:古舘寛治、奥田洋平、野津あおい、羽場睦子、武谷公雄、伊東沙保、鶴巻紬、山田百次