野田地図『足跡姫 時代錯誤冬幽霊』
亡き中村勘三郎へのオマージュと謳った作品。そのオマージュは本人に直接ではなく主に歌舞伎を介して捧げられている。
今の歌舞伎の源流を形作った出雲阿国と猿若勘三郎(初代中村勘三郎)を彷彿とさせる三、四代目出雲阿国と淋しがり屋サルワカの二人が安寿と厨子王的な姉弟の設定で旅芸人の一座に加わり各地を放浪している。姉の夢はお城の将軍の前で踊りを披露することだ。弟は穴をほるのが趣味だが、姉のために台本を書き上げようとしている。
という根幹となるストーリーに二つのサブストーリーが被さってくる。ひとつは由井正雪の乱。捕らえられて処刑された正雪の死体が腑分けのために盗み出されなぜか「売れない幽霊小説家」として復活をとげる。もうひとつはタイトルの「足跡姫」。地球の裏側いずこの国で迫害された人たちの怒りが足跡姫として姉に憑依し復讐を遂げようとする。
かなりてんこ盛りでいつも2時間前後で終わる野田地図が今回は休憩15分挟んで2時間半超だった。野田作品の持ち味はアップテンポな展開でそれは今回も健在。ただいつもはそのいささかとっちらかった中から最後に核となるものをとりだして「そうか、これだったのか」と唸らせてくれるんだけど、今回はそのかわりに十八代目中村勘三郎への直接の賛辞で締めくくられて、回収されない断片が取り残された感がある。
堀尾幸男さんの美術がすばらしい。
作・演出:野田秀樹/東京芸術劇場プレイハウス/S席9800円/2017-01-20 19:00/★★
出演:宮沢りえ、妻夫木聡、古田新太、佐藤隆太、鈴木杏、池谷のぶえ、中村扇雀、野田秀樹、秋草瑠衣子、秋山遊楽、石川朝日、石川詩織、大石貴也、上村聡、川原田樹、末冨真由、鷹野梨恵子、手代木花野、土肥麻衣子、西田夏奈子、野口卓磨、野村麻衣、花島令、福島梓、本間健太、前原雅樹、松崎浩太郎、的場祐太、モーガン茉愛羅、吉田知生、吉田朋弘