遊園地再生事業団プロデュース『モーターサイクル・ドン・キホーテ』

作・演出:宮沢章夫/横浜赤レンガ倉庫1号館/指4200円/2006-05-27 19:00/★★★

出演:小田豊、下総源太朗、高橋礼恵、岩崎正寛、鈴木将一朗、田中夢

横浜市鶴見区のバイク修理工場。初老を迎えた店主忠雄とその年若い妻真知子。真知子がそこにいるわけは彼ら以外の誰も知らないし、彼ら自身もまた違和感のようなものを感じている。忠雄はたったひとりの有能な従業員坂崎に真知子を誘惑してみてくれと頼んでいた…・・・。

このプロジェクトはウィリアム・シェイクスピアの失われた戯曲といわれる『カルデーニオ』がテーマになっていて、現存はしないものの元ネタがセルバンテスの『ドン・キホーテ』の中の一エピソードであることがわかっているので、おおよそのストーリーはうかがい知ることができる。そこで描かれている二つの三角関係が今回のこの物語にオーバーラップする。

さらに、そこにドン・キホーテの物語が浮かび上がる。ドン・キホーテは忠雄、忠臣サンチョ・パンサは坂崎だ。二人は北の地で開かれるカーニバルをめざして旅に出る。ある意味、この物語の主人公は坂崎で、夢の中に生きる忠雄とは正反対に、一切の夢を拒否するために旅にでたのかもしれない。帰りついたあと、彼の胸の中に生まれた感情は何だったのだろう。ちょうどチェーホフのワーニャが感じたようなやりきれない思いだったのだろうか。