開いた窓

電車の窓が開いていた。

季節は1月後半の真冬、時刻は夜9時前後、窓から吹き込んでくる風は決して心地よいものではなかった。誰かが悪意または愚かさのために開けたのか、あるいは何かの必要に迫られたのだろうか。今はもう、悪意も愚かさも必要もなく、ただ開いた窓だけが残されている。

閉めようとするものは車内にだれもいなかった。みな、変えられない運命のようにそれを静かに受け入れ、コートのえりをかきあわせていた。

「これこそ日本の社会だ。」ぼくは、そう自嘲するだけで、窓を閉めようとしなかった。車内の誰もがそうだったのかもしれない。これこそ日本の社会だ。