『厭な物語』、『もっと厭な物語』
バッドエンディングの読んでいやな気持ちになる短編小説ばかりを集めたアンソロジー。最初の『厭な物語』がけっこう人気だったようで、なんと続編の『もっと——』が出ていた。二冊まとめて読んでみた。
『厭な——』の方は海外作品のみだが、『もっと——』には日本の作品三編が含まれている。一応収録作を列挙しておこう。
- 厭な物語
- アガサ・クリスティー『崖っぷち』
- パトリシア・ハイスミス『すっぽん』
- モーリス・ルヴェル『フェリシテ』
- ジョー・R・ランズデール『ナイト・オブ・ザ・ホラー・ショウ』
- シャーリイ・ジャクスン『くじ』
- ウラジミール・ソローキン『シーズンの始まり』
- フランツ・カフカ『判決 ある物語』
- リチャード・クリスチャン・マシスン『赤』
- ローレンス・ブロック『言えないわけ』
- フラナリー・オコナー『善人はそういない』
- フレドリック・ブラウン『うしろをみるな』
- もっと厭な物語
- 夏目漱石『夢十夜より第三夜』
- エドワード・ケアリー『私の仕事の邪魔をする隣人たちに関する報告書』
- 氷川瓏『乳母車』
- シャーロット・パーキンズ・ギルマン『黄色い壁紙』
- アルフレッド・ノイズ『深夜急行』
- スタンリイ・エリン『ロバート』
- 草野唯雄『皮を剥ぐ』
- クライブ・パーカー『恐怖の研究』
- 小川未明『赤い蝋燭と人魚』
- ルイス・バジェット『著者謹呈』
読みながら「厭」という共通項を忘れて、ふつうの小説を読んでいるつもりになって、途中ではっと気がつき、「厭」に身構えるという感じだった。恐怖小説がくせになるように「厭」もくせになる。その「厭」のタイプごとに際立った作品をあげておこう(必ずしも好きというわけではない)。
恐怖部門は『深夜急行』、狂気部門『黄色い壁紙』、心理部門『言えないわけ』、ブラックユーモア部門『著者謹呈』、グロテスク部門『ナイト・オブ・ザ・ホラー・ショウ』。最後のは読んでてほんとうに胸くそが悪かった。ある意味すばらしい。
次にあるであろう。『もっとも厭な物語』が楽しみだ。