山本貴光+吉川浩満『その悩み、エピクテトスなら、こう言うね。』

その悩み、エピクテトスなら、こう言うね。: 古代ローマの大賢人の教え (単行本)

ストア派の中心人物のひとりエピクテトスの思想の入門書。彼は紀元1世紀中頃から2世紀中頃、帝政ローマ期にギリシアで活躍した哲学者で、もともと奴隷の出身から身を立てたといわれている。

ほぼ著者二人のかけあいで構成されているのでとても読みやすい(そして、なんとエピクテトス自身まで登場する!)。それだけじゃなく、もともとストア派は実際的な行動指針の部分が大きいので、哲学書とは思えないほど、とてもわかりやすかった。なにせ、その思想の根幹は一文で説明できてしまう。

「自分の権内にあるものと権外にあるものを見極めよ」。

自分の権外、つまり権限や力の及ばないことにくよくよ悩んでみても仕方ないから、権限の及ぶことに集中せよ、というある意味あたりまえに感じてしまう指針だ。でも実際にやろうとするととても難しい。エピクテトス自身が、たゆまぬ訓練が必要だといっている。

もちろん、エピクテトスおよびストア派の思想はそれだけに留まらない。ぼくはスピノザが好きなんだけど、汎神論など、彼の思想の多くが、ストア派のから要素を借りていることがあらためて理解できた。本書ではその隅々までは紹介されない。あくまでインデックスだけだ。そこに触れるには本書で紹介されていり参考文献に当たる必要がある。もともとそういう導線になることを意図して書かれた本だと思う。ぼくも何か読んでみようと思った。

★★