ふざけたペンネームだと思っていたが、作品は本格的だった。名前を聞いただけでワクワクしてくる南方熊楠、江戸川乱歩など昭和初期の名士たちが活躍し、粘菌による人工知能を開発し、少女型「人形」に組みこむという、ロマンあふれるSF巨編。
エンタメとしても王道だが、夢と現実をめぐる哲学論議も奥深い。文体も、この作品の舞台となっている時代に書かれた海野十三の冒険小説を彷彿とさせるが、そこにディック的な爛れた幻想描写が入り混じり、まごうことなき現代性を獲得している。単に面白いというだけでなく、読み終わると静かな感動と余韻が残る作品だった。
★★★