山下範久編著『教養としての 世界史の学び方』ebook

教養としての 世界史の学び方

具体的な世界史上の出来事ではなく、世界史を記述する歴史学という学問がどういうもので、その記述としての世界史は現状どうあるべきであることになっているかということについてのメタな本。もともと歴史学を学ぼうとする学生の教科書として企画されたというのも頷ける。

第I部は『私たちにとっての「世界史」はいかに書かれたきたか』。歴史学が生まれてきた経緯をたどり、「近代の目的視」、「ネイションという主体」、「ヨーロッパ中心主義」という3つのバイアスが紹介される。特にこのパートでは歴史研究の中で培われてきた、近代が歴史の到達点として扱われるバイアスについての指摘がなされる。

第II部は『世界史と空間的想像力の問題』。ここで扱われるのは「ヨーロッパ中心主義」というバイアスと、それへのカウンターとしてのアジアやアメリカなど別との地域に視点をずらしてみた世界史だ。

第III部は各論で、「市場」、「市民社会」、「主権国家」など歴史のなかで自明と思われている概念を解体していく。

これから歴史について語るにはここに書かれていることを最低限踏まえる必要があるよという含蓄に満ちた本だった。ただ、全体的に駆け足なので、概容を一望するだけになってしまう。疲れているときに読むといい感じの睡眠導入剤になった。

内容ではなくメディアに関する指摘だが、Kindle版を読んだのだが、第III部第12章のコラムはKindle端末だとページ間に抜けができて文章が飛んでしまっていた。iOS版のKindleなら大丈夫だった。

★★