『ポストカード・ラヴァーズ』 by Kazuo Ishiguro

なんとノーベル賞作家カズオ・イシグロ作詞のジャズナンバー。かわいらしいトーンのなかにぴりっと人生の皮肉がまじっている。カズオ・イシグロらしいリリックだ。 ...

『アメリア』 by Joni Mitchell

1937年に世界一周飛行中に行方不明になった女性飛行士の草分けアメリア・イアハートが乗ってた飛行機の残骸と思われるものが海中から発見されたというニュースがとびかっているので、彼女をテーマにしたジョニ・ミッチェルの名曲『アメリア』を訳してみた。 ...

『ホテル』 by ギョーム・アポリネール

アポリネールの詩だが、プーランクの歌曲として知っている。とても短い。 この部屋は鳥かごの形をしている 太陽の腕が窓を通り抜けてくる でも私はたばこをくゆらせて幻影をつくっていたい 日光でたばこに火をつける 仕事をしたくない - たばこを吸っていたい ...

Prince『ときどき四月に雪が降る』

震災直後の2011年4月にはじまった直後から聞き続けていたラジオ番組『菊池成孔の粋な夜電波』が年内で終わってしまうという告知をきいた。最初ピンとこなかったのだけど、徐々に喪失感が膨れあがってきた。たわいのない馬鹿橋のなかにふと紛れ込むウイズダムと愛情に満ちた言葉と音楽は、日常と生きることの本質みたいなものの間の架け橋の役割を果たしてくれた。 ...

『ただ君を愛していたい』 by ポール・エリュアール

連日のポール・エリュアール。今日はプーランクが歌曲にしている詩を訳してみた。短くてつかみどころがない曲だけど、詩がいい。単純な恋の歌であるようでありながらこの世界の謎に向き合っているような奥深さを感じる。 ...

『魚』 by ポール・エリュアール

久しぶりにフランス語からの翻訳。nageur をどう訳すかで迷った。「泳ぐ人」だと不自然な言葉だし、カタカナで「スイマー」というのも異物感がある。日本語には適当な言葉がない。 ...

『日の出』

後半生作曲から手を引いてしまった作曲家というとロッシーニが有名だけど、チャールズ・アイヴズもまた1926年以降1954年に亡くなるまで作曲していない。彼が最後に作曲したといわれているのは Sunrise というピアノ、ヴァイオリン伴奏つきの歌曲だ。半音階的で不安を感じさせるメロディーはまるで一睡もできないままむかえた朝の光のようだ。でも訳してみると静かな希望をたたえた新年にふさわしい歌詞だった。 ...

『火と氷』 by ロバート・フロスト

世界の終わりについての宇宙物理学的な詩。火=欲望=経験、氷=憎しみ=知識という対比がおもしろい。 世界は火の中で終わるという人がいる 氷の中で終わるという人もいる。 これまで味わった欲望の旨味からすると 私は火が好きな人たちの肩をもちたい。 でも世界が二度滅びなくてはいけないのなら、 私の憎しみについての知識から言えるが 破壊のためには氷もまた最適だし 十分役割を果たすだろう。 ...

往くことと留まることの間で by オクターボ・パス

2014年から2015年へかけての往くことと留まることの間で訳してみた。新年の挨拶に代えて。 往くことと留まることの間で 昼間は足踏みする その透明さを愛しながら。 循環する午後は今や湾だ そこでは静止した世界が揺れる。 すべては目に見えすべてはとらえどころがない すべては近くにあるのに触れることができない。 紙、本、鉛筆、コップが 名前の影にかくれて休んでいる。 時はわたしのこめかみをずきずき打ち 血流の同じ、変わることのない音節を繰り返す。 光はどうってことない壁を 反射の霊的な劇場へと変化させる。 わたしは目の中にいることに気がつく それはわたし自身をうつろに凝視している。 瞬間は散乱する。動かずに、 わたしは留まりそして往く - 私は停止なのだ。 ...

『これはわたしから世の中への手紙です』 by エミリー・ディキンソン

横浜で開かれた現代音楽のコンサートで歌われた詩を訳してみた。 これはわたしから世の中への手紙です 世の中の人たちはわたしに手紙をくれたことはないけど 自然が教えてくれたシンプルなニュースを ささやかな威厳とともに届けます 自然のメッセージは 目に見えない手に託されました 自然への愛に免じて、心優しい田舎のみなさん わたしを温かい目で見てください ...

『あるうまいやり方』 by エリザベス・ビショップ

twitterのTLにある詩の一部が引用されていて、いいなあと思い検索してみたら、なんと訳したばかりのエリザベス・ビショップの詩だった。 何かを失う、うまいやり方をマスターするのは難しいことじゃない ほとんどの物事はなくなるものであることを常に意識しているので なくしたとしてもそれは最悪の出来事じゃない 毎日何かをなくしなさい ドアの鍵をなくしたりひどい時間を過ごしたときも そのイライラを受け入れなさい 何かを失う、うまいやり方をマスターするのは難しいことじゃない そうしたらどんどんなくす練習をしなさい、どんどんどんどん 場所、名前、いこうと思っていた旅行の行き先 どれをなくしてもそれは最悪の出来事じゃない 母の時計をなくした。見て!三軒の愛しい家のうち 最後とひとつ前の家はなくなった 何かを失う、うまいやり方をマスターするのは難しいことじゃない 美しい二つの都市、もっと広大ないくつかの領地、 二つの川、大陸をわたしはなくした なくなってさみしい、でもそれは最悪の出来事じゃない — あなた(ふざけた声と好きな仕草)を失うことも…… といっても嘘にはならないでしょう 確かに、何かを失う、うまいやり方をマスターするのは不可能じゃない でもそれは最悪の(メモしておきなさい!)最悪の出来事みたいに思える ...

『待合室にて』 by エリザベス・ビショップ

女の子が歯医者の待合室で離人症的な不思議な体験をする話。気軽に訳しはじめてみたが、細部の訳し方が難しくて頓挫しそうになった。でも、これは訳しておくべきなんじゃないかという使命感のようなものがここ数日でめばえ、迷いをたちきる感じで訳してみた。 ...

『一番悲しい詩』 by パブロ・ネルダ

このサイトの目下暫定の副タイトル “sad songs for sad nights” には特に意味なんてないんだけど、まあ人はなぜか悲しい歌をききたくなるよね。特に夜に。それが楽しい夜であっても、悲しい夜であっても、特にどうってことのない夜であっても。たいていの夜は特にどうってことのない夜だ。悲しい歌はそんな無色の夜に色をつけてくれる最大の娯楽なんじゃないか。そうやって悲しい夜という虚構がうまれてゆく。なんていうことはこれっぽっちも考えてない。まあ、そういうこととはあまり関係なく、偶然、悲しみと夜に関する詩が見つかったので訳してみようと思ったわけだ。でも、結構ベタに失恋の詩で、女々しすぎる気もしたのだが、そういうときは女々しくなるもので、その女々しさをうまく訳せればいいなと思い、やっぱり訳してみた。チリの詩人だから原詩はスペイン語だったかもしれないが、見つけたのは英語バージョンだ。 ...

『忘れられない微笑み』 by チャールズ・ブコウスキー

たまに、ストーリーがある短編小説みたいな詩を訳してみた。 うちでは金魚を飼っていた 金魚たちはぐるぐる金魚鉢の中をまわっていた 台のテーブルのそばには厚いカーテンがあって その裏には見晴らし窓があった 母はいつも微笑んでいて ぼくらを楽しくさせたがった ぼくにこういうのだった 「楽しくしなさい、ヘンリー」 母のいう通りだ もしできるんだったら楽しくした方がいい でも父は週に何度も母とぼくをなぐり続け その間父の185センチの身体の内側では怒りが荒れ狂った 父は中から自分を攻撃しているのが何なのか理解できなかったのだ 母、かわいそうな人、楽しくなることを望みながら、週に2,3回なぐられて ぼくには楽しくしなさいという 「ヘンリー、笑いなさい、さあ、笑って」 母はぼくに笑ってみせようとした それは ぼくがみた一番悲しい微笑みだった ある日金魚が死んだ 五匹いっぺんに 水面に横向きに浮かび 目は開いたままだった 父が帰ってきて金魚の死体を 猫がいる 台所の床にほうり投げた ぼくたちが見ると 母は微笑んでいた ...

『30セント、切符2枚、ラブ』 by リチャード・ブローティガン

リチャード・ブローディガンの詩はこういう俳句みたいに短いものが多い。逆に訳すのが難しい……。 一応、『翻訳教室』に書いてあったことを意識して訳したつもり。 君のことをあれこれ考えながら バスに乗った 料金30セントを支払って 運転手に切符を2枚注文した その後で気がついた ぼくは ひとりぼっちだった Japanese translation of “30 cents, Two Transfers, Love” ...

『ここまできたのははじめてだ』 by e.e. カミングス

もうひとつ続いてカミングス。言葉の使い方がほんとうに美しいとしかいいようがないので、以前から挑戦しようと思っていた。恋愛をテーマにした詩ということになっているのでぼくにうまく訳せるとはとても思えないが、やれるだけやってみた。 ...

『マギーとミリーとモリーとメイ』 by e.e.カミングス

せっかくの連休なので久々に翻訳をしてみた。夏になる前に海をみたくなった。 マギーとミリーとモリーとメイは ある日浜遊びに出かけた マギーは歌う貝をみつけて 甘い歌声に悩み事を忘れた ミリーは打ち上げられた★を助けた 光線は五本のだらりとした腕 モリーはおそろしい生き物に追いかけられた 泡を吹きながら横に歩く そしてメイはつるりとした丸い石を持ち帰った 世界みたいに小さくて孤独のように大きい そう どんなものをなくしても(きみみたいなものやわたしみたいもの) 海ではちゃんと自分自身が見つかるのさ Japanese translation of maggie and milly and molly and may ...

『雪の夜森のそばで立ちどまる』 by ロバート・フロスト

雪にちなんで、今日もまたロバート・フロストの雪に関する詩を訳しておこう。 それが誰の森なのか知っている気がした 彼の家は村の中にあるので 雪に覆われた森を見ているところを 見とがめられることはないだろう 私の小さな馬はおかしいとおもっているはずだ 近くに農家もない 森と氷結した湖のあいだで立ちどまっているなんて 一年で一番暗い夜 馬は馬具のベルを震わせる 何か間違いがないか尋ねるみたいに 他の音といえば一連の 穏やかな風とふわふわした雪のかけら 森は美しく、暗く、そして深い でも私には果たすべき約束がある 今日中に進むべき道がある 今日中に進むべき道がある ...

『雪の粉』 by ロバート・フロスト

雪に関する、ある小さな救済をうたった詩だけど、それを訳すことで、雪の日を無為に過ごしてしまったぼくも救われようと思った。 カラスが ツガの木から わたしの上に 雪の粉を震いおとした それがわたしの 気分を変えた 残念な一日の 一部を救ってくれた ...

『11月を生きのびる理由』 by トニー・ホーグランド

“November” で検索してヒットした詩。こういうネガティブな怒りは確かにぼくの中にもあるものだが、この詩の書き手のようにそれを強さにかえることはぼくにはできそうにない。せめて翻訳してみる。 ...