名詞の性

Q

何故、言葉に性がついたのだろう?花に花言葉を勝手につけて意味を持たせてしまうくらい失礼だ。あるがままでいいじゃないか。(O.Kさんの質問)

A

今回はbritannica.comで調べました。まず、文法用語で"性"(英語では"gender"、以下ややこしいので、文法上の性はgender、生物学上の性はsexと表記します)というのは、一般的に、ある言葉(通常は名詞)が属する種別と一致して他の関連する言葉(代名詞や形容詞など)が変化する場合に、その種別のことを指すようで、例えば、スワヒリ語では「動くもの」、「動かないもの」、「植物」、「動物」、「道具」などというgenderがあるようです。インド=ヨーロッパ語族に属するといわれている言語では、sexがあるものについては、文法上のgenderが実際のsexと一致しています。フランス語、スペイン語、イタリア語などは男女二つのgenderがあり、ドイツ語、ロシア語ではこれに中性を加えて三つのgenderがあります。英語も昔はgenderがあったようですが、今ではなくなってしまいました。

さて、これらインド=ヨーロッパ語族に属する言語は5000年くらい前には一つの言語だったといわれています。この言語はとにかく複雑で、“数"も単数、複数のあいだに「ニつ」というのがあったり、動詞は人称、数、相、法、時制、態に応じて複雑に変化したようです。名詞のgenderは三つで、「男性」、「中性」、「女性」。この言語から枝分かれした現代の各言語は、かなり単純化されたものの、genderの一致というしくみは残っているものが多いということです。

さて、ここから先は筆者お得意の推測です。genderの一致がなぜ生まれたかというと、言葉のリズムを整える(例えば語尾の韻をふむ)ためだと思います。つまり、sexという概念とはまったく関係なく、語形によっていくつかのグループ分けがされ、それに応じて、genderの一致が行われていたということです。一方、名詞の最後にsexを示す接尾詞のようなものを付加して、そのもののsexをあらわしていたのが、いつしか名詞本体と接尾詞が合体して、一つの言葉になった結果、男性を表す言葉の語形と、女性を表す言葉の語形に明らかな違いが生まれ、男性を表す名詞はすべてあるグループに、女性を表す名詞はすべて別のグループに分類された。それで、いつしか男性を表す名詞が含まれるグループを男性名詞、女性を表す名詞が含まれるグループが女性名詞と呼ばれるようになったのではないでしょうか。それ以外は中性名詞ですね。

信憑性はともかくとしてもっともらしさには自信がある結論です。